世界の児童労働の現状とは?原因や取り組み、私たちにできること

世界では10人に1人の子どもが児童労働に従事しています。また、新型コロナウイルスの蔓延による経済的な打撃等の影響でその数は悪化傾向にあると言われています。

児童労働の定義とは?

 児童労働とは、『15 歳未満(途上国は 14 歳未満)の義務教育を受けるべき年齢の子どもが教育を受けずに働くことおよび 18 歳未満の子どもによる危険有害労働などへの従事を指す(引用:『児童労働白書2020』)』と定義されています。

例えば、日本で高校生が学校に行きながら自分の意思で飲食店でアルバイトをすることや、途上国で学校に通いながら家の手伝いやアルバイトをすることは、その仕事が「危険有害労働」でない限り「子どもの就労(Child work)」となり児童労働とは区別されます。

「危険有害労働」には何が含まれるかというと、『夜間や長時間の作業、肉体的・心理的・性的虐待に晒される作業、地下・水中・高所・閉所での作業、危険な機械・道具の使用や重量物の運搬を伴う作業、化学物質や高温・騒音に晒される作業(引用:『児童労働白書2020』)』などです。

これらは国際条約で早期の撤廃が求められています。

児童労働の現状

児童労働に従事する子どもの数の4年ごと推移グラフ

2016年時点で世界の子どもの10人に1人である1億5200万人が児童労働に従事していると言われています。2015年に国連で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals)の目標では、2025年までにあらゆる形態の児童労働を廃止するとしていますが、達成は困難とされています。

新型コロナ後の2020年の現状

世界で児童労働に従事する子どもの数は、2000年の2億4600万人をピークに国際社会の取組により減少傾向にありました。2004年には2億2200万人、2008年には2億1500万人、2012年1億6800万人、2016年1億5200万人となっています。

しかし最新のレポートによると、近年の新型コロナウイルス蔓延の影響で2020年時点でその数は1億6000万人となり、過去20年間で初めて増加となりました。(上図)これは、経済活動の停滞や社会保障の縮小によって家計の貧困化が進んだことや、学校閉鎖・移動制限などで監視力が低下したことが要因とされています。

地域別の現状

このような世界の児童労働問題ですが、地域・国別ではどのような傾向があるのでしょうか。地域別に見ると、児童労働に従事する子どもの数はサハラ以南アフリカ地域で最も多く、8,660万人となっています。次いで中央・南アジアで2,630万人、東・東南アジアで2,430万人となっています。2016年から2020年の増加に関しても、サハラ以南アフリカ地域が最大の増加となりました。

産業別の現状

産業別に見てみると、児童労働の約7割が農林水産業に集中しています。これは、私たちの身近な商品にも児童労働問題が潜んでいることを意味しています。児童労働の多い産業の具体例としては、カカオ(チョコレート)・コットン・コーヒー豆・サトウキビ(砂糖)・タバコ・パーム(油)などが挙げられます。

児童労働の原因

児童労働の原因は、大きく供給側と需要側の2つに分けられます。供給側の原因としては、まず、家庭の貧困が挙げられます。経済的な状況から家計を助けるために子どもが働く場合や、親が子どもを売ってしまう場合など様々です。また災害や紛争などでこうした家庭の貧困が助長されることもあります。

2つ目は、地域の差別・慣習です。例えば世界には男女で教育を受ける必要性に差が出る地域がまだあります。そうした地域では概して女児の教育は軽視されがちになります。3つ目は、環境の未整備です。農村部の場合、近くに学校がないことや教員が不足していることもあります。また行政の取り締まりが不十分であるなど、監視の目もないことから児童労働が見過ごされがちです。

需要側の原因は、私たちにも関係してきます。さきほど産業別の現状を見ましたが、私たちの身近にある商品にも児童労働問題が潜んでいる可能性があります。ですが、児童労働によって作られたものか、そうでないものか、商品を見て見分けがつくでしょうか?大抵の商品は見分けがつきません。消費者が企業に、企業が取引先にコスト削減を求めるため、安い労働力である児童労働が搾取されているとも言えるのです。

児童労働に対する取り組み

国ごとの児童労働に関連する政策・法整備の取り組みの違い

画像:『児童労働白書2020』

それではそんな児童労働問題に対して世界ではどのような取り組みがされているのでしょうか。国際社会・国・企業・NPOなど様々なレベルでの取り組みがありますが、ここでは国と企業の取り組みの例を挙げます。

国の取り組み

例えば先進国の取り組みとしては、児童労働が起こっている国への開発援助、貿易相手国に対して関税の引き下げと児童労働への対応を要求する条件を持つ通商政策、児童労働を含めて人権デューデリジェンスの義務化などサプライチェーン管理の法令の策定などがあります。こうした対応において、欧米やオーストラリアでは国による整備が進んでいる一方、日本は遅れをとっているといえます。(上図)

企業の取り組み

日本でもおなじみの北欧家具ブランドIKEAの取り組みを例に挙げます。IKEAは、2015年9月1日以降、全てのコットン製品でサステナブルコットンを使用しています。NGOや国連機関とも連携し児童労働撤廃にも取り組んでおり、2000年にはインドで8万人以上の子どもたちに教育機会をもたらしたと報告しました。

私たちにできることとは

 

新型コロナの影響で増加に転じてしまった児童労働の数。国や企業、NPOなどの取り組みも期待されますが、私たちにもできることがあります。買い物のときに、児童労働問題に取り組んでいる企業やブランドから製品を購入することです。

例えば、買い物をするときに製品に認証ラベルがついているかを見てみてください。GOTS認証フェアトレード認証など、児童労働に関する基準が設けられたマークがあります。

その他にも、認証ラベルがなくても現地に密着し児童労働をなくそうと取り組んでいる企業も多く存在します。興味がある方はぜひ調べてみてください。

 

参考