ラナプラザの悲劇とは?事故の背景から世界の取り組みについて

私たちが毎日当たり前に着ている衣服。どこで誰に作られているのか、どんなものからできているのか、なぜ驚くほど安い価格で売られているものがあるのか。私たちはこうした服の裏側を知らないでいることが当たり前だと思います。

そんな中起こった、バングラデシュでのラナプラザ崩壊事故。縫製工場の入ったビルが崩壊しそこで働いていた人々など1100人以上が亡くなりました。事故の概要や背景にある問題、私たちにできることなどをまとめました。

ラナプラザの悲劇とは?

ラナプラザビル崩壊の写真

画像:https://www.wwdjapan.com/articles/951702

事故の概要、経緯

2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカ近郊にある商業ビル「ラナプラザ」が突如崩壊しました。ビルの崩壊で1100名以上の方がなくなり、負傷者や行方不明者を合わせると被害者は4000人以上にのぼりました。

事故後調査を進めると、事故の前日には建物に亀裂が見つかり報告があがっていたものの、ビルのオーナーはそれを無視して操業を続けていたことや、建物は違法に増築を繰り返していたことがわかりました。ラナプラザの中には、世界的なアパレルブランドの下請けをする縫製工場が5つ入っていました。

世界の縫製工場バングラデシュ、過去にも事故

南アジアに位置するバングラデシュは、その人件費の安さから多くの欧米アパレルブランドの下請けとして機能し、縫製産業とともに経済成長を果たしてきました。そんな中で実はラナプラザ崩壊事故以前にも、工場の火災や崩壊は度々起こっていました。2012年11月には、タズリーン・ファッション社の火災が発生。112名が亡くなり、負傷者も200人にのぼりました。このときも国際的な問題になりましたが、ラナプラザ事故が起こり消費者も含め先進国の責任を問う声が一層高まりました。

ラナプラザ崩壊事故の背景にある問題

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ラナプラザに入っていた縫製工場は、いわゆるスウェットショップ(搾取工場)と呼ばれるものでした。スウェットショップとは、工員を違法な低賃金かつ劣悪な労働環境で働かせる工場のことを指します。児童労働や強制労働、セクハラやパワハラなども含まれます。先進国のアパレル企業も、人件費の安い国で効率よく大量に作ることを重視する結果このような労働力の搾取が起こってしまいます。

冒頭で述べたように、今着ている服がどこで誰に作られたものなのか、気にする人はあまりいません。それは服をデザインし販売する企業も同様で、気にするのは1枚いくらでつくれるかという「安さ」。どこで作るのが安いかと考えれば、それはさきほど挙げたような労働環境の整備や福利厚生にお金をかけなくてすむ搾取工場のようなところになります。誰も、服の裏側に関心を持たないことが問題を放置する結果になっていまるのではないでしょうか。

ラナプラザ後のアパレル産業の動向

Banani, Dhaka, Bangladesh

 

事故を受けて、バングラデシュ政府は縫製産業の火災や建築構造の安全性を高めるための行動方針を打ち出しました。その後労働法を改正、2013年12月に最低賃金を 3,000 タカ(約 4,000 円)から 5,300タカ(約 7,100 円)に引き上げました。


また事故翌月には欧州企業を中心として「バングラデシュにおける火災および建物の安全性に関する協定(the Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh)」(通称アコード)が策定され、多くのアパレルブランドが署名しました。これは、ラナプラザ崩壊事故のような悲惨な事故を繰り返さないことを目的としたものです。ユニクロ(UNIQLO)を運営するファーストリテイリングもこの署名に参加しています。縫製工場の建設や火災対策の基準が設けられ、それを遵守しているかどうかを企業が選定の基準にするというものです。期限付きだったものの2020年5月に後継団体に引き継がれ、工場の検査や指導が行われています。

映画「トゥルーコスト」

TrueCost_FilmStill_01

© UNITED PEOPLE

このラナプラザ崩壊事故を取りあげたドキュメンタリー映画『トゥルーコスト』があります。当時の事故の映像や、そこで働いていた方のインタビューなどもあり、心が痛みます。この映画を見たことで、服との付き合い方を改めて考えるきっかけとなった人も多いと聞きます。DVDで販売している他、有志での上映会なども度々開催されていますので興味があればぜひ見てみてください。

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私たちができること

私たちにできることは、自分が買おうとしている服がどこで誰に作られたかに関心を持つことではないかと思います。しかし、服を見るだけではそのような情報がわからないことがほとんどです。その際は、サステナブルな認証マークや上述したアコードに署名している企業から購入するなど、服の裏側の工程にきちんと配慮をしている企業を選ぶことをおすすめします。

昨今のSDGsの流行も受け、そうした配慮を行う企業も個人も増えてきていると感じます。搾取のない社会が実現するよう私たちも取り組んでいきたいと思います。

参考