「04 COFFEE テンセル™繊維混ノースリーブ」のコーヒー染め加工をお願いしたのは、東大阪市にあるクリーニングと染色加工の会社、福井プレスさん。1938年に創業し、現在は3代目の福井伸さんが継いでいます。

福井プレス工場の様子

福井プレスさんは、衣類の大量生産・大量廃棄やフードロス、食糧問題など様々な社会問題にアンテナを張りそこへのソリューションを提案しています。

例えば、服の染め直しができる「染め直し屋」。ファストファッションが流行し服を着る期間が短くなっている現代。汚れやシミがついてしまった服、色あせてしまった服。そのまま捨ててしまう方も多いのではないでしょうか。「染め直し屋」では、個人の方でも長く服を楽しめるようにと1着から染め直しを受け付けています。染め直すという選択肢を提供することで、長く愛着を持って服を着るカルチャーの提案をしています。 

フードロス豆等を使ったコーヒー染め

染料となるコーヒー豆

コーヒー染めのきっかけは、ご家族の働くコーヒー焙煎工場を訪れたときに目に止まったチャフという廃棄物。染色ができないかと試してみたところ良い色が出たことから、事業化したところ、フードロスといった観点から徐々に引き合いが増えていったといいます。

コーヒー染めに使う染料は、消費期限の過ぎたコーヒー豆や焙煎時に出る廃棄物チャフ、豆を挽く時に出る粉砕片などで、主に東大阪市内のコーヒー店から回収し使用しています。

コーヒー染めの工程は他の草木染めの過程と同じように、まず染料を煮出して色素を出します。染める服や生地は汚れを落とした後、よく染まるように濃染処理を行います。処理後、服や生地を染料を煮出した液の中にいれて染色をします。すすぎをした後、色止めと発色の効果がある媒染をします。最後に、乾燥とプレスをしてコーヒー染めの服の完成です。

コーヒー染めをしているところ

工程数の多さから、化学染料を用いた染色より3倍程の時間が必要となります。家庭でよく行われるような、ドリップ後の粕を使用したコーヒー染めと違い、フードロス豆や粉砕片を使用することで、濃い色合いに仕上げることが可能となります。 

コーヒーかすでキノコを栽培

キノコ栽培

福井プレスさんがすごいのは、フードロス豆などの廃棄物でコーヒー染めをするだけでは終わらないところ。福井プレスさんでは、煮出した後のコーヒーかすも再利用しようと、コーヒーかすを培土として使用したキノコ栽培キットの開発に取り組んでいます。

元々は、煮出した後のコーヒーかすを肥料として使えないか検討していたと言います。しかし、堆肥化するには数ヶ月かかること、農家さんに使ってもらわなければならないこと、また堆肥化するには煮出した後の水分を含むコーヒーかすを完全に乾かさなければならないことなどハードルが高く、再利用の方法を色々と模索していたそうです。

コーヒーかす培土

そんな中、コーヒーかすを使ったキノコの家庭菜園がヨーロッパで行われていることを知ります。キノコ栽培の菌床は水分を必要とするのでまさにぴったりの素材だったというわけです。偶然にも、近畿大学にキノコの研究をしている方がいたことも、大きなきっかけとなりました。 

 近畿大学の協力の元、2021年の秋にはコーヒーかす培土でのキノコ栽培に成功。私たちの家庭に、コーヒーかすのキノコ栽培キットがやってくる日は近そうです。

 サステナブルな循環の構築へ

バイオコークス燃料

実は福井プレスさんでは、麦芽かすや花びらなど染料となりそうな廃棄物をコーヒーかす以外にも受け入れています。しかし、すべての廃棄物がキノコ栽培に適しているわけではありません。そうなると、せっかく受け入れた廃棄物の行き場がなくなってしまいます。

そんな状況を打破したのが「バイオコークス」の存在です。みなさん、バイオコークスって聞いたことありますか?

バイオコークスというのは、お茶殻や果物の絞りかすなど植物性廃棄物のゴミを原料として作られる燃料です。原料が植物のためカーボンニュートラル*で、1000℃以上の高温で長時間燃焼できるため、製鉄に不可欠な石炭を代替できる環境に配慮したバイオ固形燃料として注目されています。

*二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量とがプラスマイナスゼロの状態になる

バイオコークスを作っている企業からコーヒーかすが欲しいと福井プレスさんに声がかかり、コラボレーションが実現。バイオコークスという最終的な行き場があることで、様々な廃棄物の受け入れや大手コーヒーメーカーからの多量なコーヒーかすの受け入れも可能になったと言います。

バイオコークス耐火煉瓦で燃焼の様子

今後は企業だけではなく、バーベキューなどのアウトドア用として一般の方にも販路を広げていきたいとお話されていました。

自らの関わる部分から着実に、循環型社会の実現へと取り組む福井プレスさん。柔軟な考えで、好奇心を持ち、可能性のありそうなことへトライする福井さんだからこそ、業界を超えた循環を作り上げていけるのではと感じました。 

福井プレスの福井伸さん

▼福井プレス公式サイト 

https://fukuipress.com/