インドでの委託生産、その先に見るもの。

こんにちは、CO+代表の才野です。

早いもので、ウェブサイトをオープンしてから約2ヶ月が経ちました。まずは、InstagramやTwitterなどで見てくださっている方々、応援の声をかけてくださる方々、ご購入くださった皆様、ありがとうございます。いつも大変な励みになっております。

今後は、サイト内にあるこちらのブログ機能も活用してコミュニケーションをとっていけたらと考えています。今回はよく聞かれる「なぜインドなの?」という点について、自分の原点でもあるので書いてみようと思います。

インドでの生産と環境問題

環境問題に関して言うと、インドで生産を行うということは国内生産と比較して輸送距離も長くなり、CO2排出の点でマイナス要素になり得ます。サステナビリティを掲げているブランドの中には、できるだけ輸送にかかる二酸化炭素排出を抑えようと、国内や近隣諸国でサプライチェーンを完結するようにしているところもあります。

それでも、事業を立ち上げるにあたり実施した工場探しはインド一択でした。私の根っこの部分には、インドの中でも社会的に弱い立場にある人々のエンパワメントや雇用創出に取り組みたいという想いがあるからです。それが環境問題への関心と合わさり、サステナビリティに注力したアパレルブランドの立ち上げに至りました。

※排出した分のCO2は、今後相殺していけるよう取り組みたいと考えています。

貧困、カースト、女性蔑視

私がインドに出会ったのは学生の頃。きらびやかな街並みと、煤けた服を身にまとう物乞いの人々が混在する都市部。幼子を抱え路上で眠る家族。ビルの裏手にできるスラム街。

私が研究の調査で訪れた農村部では、カースト差別や女性蔑視が根強く残っていました。その地域は砂漠地帯だったこともあり、水は貴重な資源でした。地域コミュニティで溜池を管理し雨季に水をため、乾季にはその水を生活用水や飲料水として使います。ただでさえ水が不足している地域。その水を汲む順番はカーストが高いとされる人々から順番です。

女性は14-15才など若くして生まれた家を出て嫁いでいくことも多い地域なので、一家の稼ぎ手にはなりません。一家の中で男児は学校に通っていても女児は通わず家事や妹弟の面倒を見るという家庭もありました。「稼ぎ手となる男の子が生まれるまで子供を生み続ける」と言う3人姉妹の母親もいました。貧しいがゆえに、女児が望まれないことにも衝撃を受けました。

「それでも私達は幸せだ」

ある大家族にインタビューした時のこと。その家族は農閑期には都市に出稼ぎに行き、それ以外は農村部に戻ってくるというスタイルで生活をしていました。家族内の誰も学校へ通ったことがないそうで、私の向かい側には15才くらいの女性が、自分の赤ちゃんを抱いて座っていました。インタビューの通訳をしてくれていた現地NGOの職員が、誰も学校へ行っていないことに対して説得をしようと試みると、一家の父親は総括して「それでも私達は幸せだ」と言っていました。

もちろん「幸せ」かどうか自体はそれぞれなので何も言えないのですが、私の向かいに座る私より若いこの女性はこの地に生まれたことにより、慣習や家族に決められた人生を送っているということは確かだと感じました。それに対比するようなかたちで、当時私は自分でやりたいことを見つけそこに向かって一歩踏み出し、自分の世界が広がりできることが増えていく感覚に幸福感を抱いていました。だからこそ、生まれた場所が違うだけで、ここまで人生の選択肢や個々人の人生の主導権は変わってしまうのかと強烈に感じたことを覚えています。

インドでの滞在を通して、女性であるから、社会的立場が弱いから、貧しいから、そういった理由で人生の選択肢や機会が制限されている人々が大勢いることを知りました。

 働くことを通して人生の選択肢や個人の可能性を広げたい

それ以来、上記のような人に対して人生の選択肢を広げるようなことがしたいと思っていた私は、社会人になって再びインドの同じ地域を訪れた時にNGO職員の女性と知り合いました。その地域にしては珍しく20才を超えても独身で働く彼女は、照れくさそうに、でも嬉しそうにこう話してくれました。

「2年前にここに来た時は、声も小さかったし何もできなかった。でもボスの支えがあって、今ではパソコンもできるし、大人数のミーティングの進行も1人でできるようになった!」

これを聞いた時に、彼女が以前の自分と重なりました。また、以前訪れた時もカーストや女性蔑視の慣習が残る地域において、一際活き活きと輝いている女性たちがいたのを思い出しました。彼女たちは、自分たちの出自や性別の地位向上を目指して活動している団体の女性たちでした。

何か使命を持つこと、働くこと。それは、生きていく上で拠り所となる感情を生むことができます。できなかったことができるようになり、自分はこんなこともできるんだと自分の可能性に喜び、社会や誰かに必要とされている感覚を持てる。

しかし、女性であること、社会的立場が弱いこと、貧しいことによってそのような機会に恵まれなかった人々が多いのが現状です。そのような人々に対して、働くことを通して自らの可能性に気づき自尊心を高め人生の選択肢を増やせる、そんな場所をインドで作りたい。そう思っています。

現在、服の生産はすでに実績のあるインドの縫製工場に依頼をしていますが、並行して数年以内に現地での工場設立も目指して取り組んでいきたいです。もちろんその過程でサステナビリティについても力を入れて取り組んでいきます。

まだまだこれからですが、その過程を少しでも応援していただけると嬉しいです。